まめはな雑記

台湾迷の日本人による、旅行記、読書録、その他メモ。台湾以外のネタも少々含みます。

【読書録】オードリー・タン 日本人のためのデジタル未来学

かなりお久しぶりの投稿となります。

先月末から体調を崩しており、しばらく読書すらできないくらい体力(と気力)が落ち込んでおりました。6月2週目に入り、処方箋と友人がくれたお粥に救われて、かなり調子が戻ってきました。そこで、少し前から積読していた表題の本を読むことにしました。

books.rakuten.co.jp

李登輝元総統の日本人秘書をしていらっしゃった早川先生による、オードリー・タン氏へのインタビューを元に書かれた本です。

オードリー・タン氏について書かれた本としては、以下の2冊も読んだことがあるのですが、メッセージに一貫性があるため一部重複する内容も含まれます。

bookwalker.jp

bookwalker.jp

 

今回読んだ『オードリー・タン 日本人のためのデジタル未来学』では、日本人のための、という言葉がある通り、日本と台湾の比較や台湾の制度の紹介についても触れられていることが特徴的かと思いました(ほかの2冊も、日本で出版されているので、その視点がないわけではないのですが)。

以下、今回の本を読んで印象に残った点と感想をまとめます。

  • 台湾政府の意思決定は柔軟ゆえに迅速、時には朝令暮改も当たり前、というのが印象的だった。初志貫徹も悪くないが、最終的な目的のためにより良い方法を探して実行していく、間違えたらちょっと寄り道しちゃったと思えばいいという、良い意味での軽さがある気がした。日本だと、土台を固めるとか、最初のプランをしっかり固めてその後は変更せず突き進む、という行動計画を立てがち・実行しがち(そうでないと批判されがち)だが、そもそも本書で取り上げられていた新型コロナ対応に代表されるような未曾有の危機では、土台を固めること自体が困難だった可能性がある。そうなると、国民の生命と健康が第一、というポリシーは固めつつ、柔軟に迅速に最適な対応をとることが重要であり、それができたのが台湾だったのだろう。
  • 他の2冊の本でも触れられているが、デジタルはできる人だけが利用できるものではなく、みんなが使えてこそ意味があるということが強調されていた。日本のワクチン接種がうまく進んでいないところをみると(そりゃもちろんデジタル化・全オンライン化した方が効率的ではあるし人件費もかからないのだけれども)、取り残されている人がこんなにもいるのだなあということを痛感させられる。デジタルは目的ではなくツールであり、ワクチンであれば、オンライン予約は手段であって最終目的は必要な人がワクチンを接種できることなのだから、その点見失わわない議論・準備が重要なのだろうと感じる。
  • 他の2冊を読んでも感じたことであるが、オードリー・タン氏は個人としての能力も高いが、それ以上にプログラマーや社会のために役立ちたいと思っている人と政策(とそれを担当する人)をつなぐ役割を果たしている印象を受けた。シビックハッカーや市民が意見を共有できるようなプラットフォームを作り、そこで共有されたアイディアや意見を吸収し、活用まで導いていた。市民と政策をつなぐ役割こそがマスクマップを生み出し、普及させることに繋がったのだろうか。また、市民~政府の風通しが良い(選挙や署名のような時間がかかるものではなく、必要な時に意見を言えて、聞いてもらえる)ことが、市民の政治に対する関心を高める一助になっているようにも感じられた。

 

今回の読書メモは以上ですが、あともう1冊、オードリー・タン氏に関する本が積読されているので、近々読みたいと思います。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。