台湾の日本語ニュースを見ていたら、以下のような記事を見つけた。
このような調査を行っていたとは知らず、気になったので、調査の詳細を見てみることにした。
この調査の企画主体である国防安全研究院のウェブサイトをみたところ、このレポートが出所らしい。
※メタデータは掲載されておらず、このページで図表になった形式の情報しか見当たらなかった。
この調査は国防安全民意調査というもの。
最新の調査は2023年8月に、台湾本島と澎湖地区に住む20歳以上を対象に電話で実施したもので、1089人から回答を得た。
以下、各質問の回答をみていく。
現在の国防軍の戦力は過去に比べて強くなったか?
まず、冒頭の新聞の見出しになっていた質問は2021年から継続的に尋ねているとのことだった。
中文では「請問您覺得國軍現在的戰力跟過去相比有沒有變強?」であり、直訳すると、現在の国防軍の戦力は過去に比べて強くなったか?というものである。
最新のデータでは、45%の台湾人が「強くなった」と回答した。これは調査開始以来過去最高だった。直前の同年3月の調査では31%だったが、そのさらに前は43%と、結構波がある。
解説では、強くなったと回答した割合が30%台と相対的に低い時期を見ると、2022年3月(33%)はロシアのウクライナ侵攻直後だった。また、2023年3月は該当時期のレポートを見ることができなかったが、蔡英文総統の米国訪問などがあり、中国が抗議を行った時期ではあったので、多少影響をしているのだろう、と思う(推測の域を出ない)。
米国の台湾に対する軍事援助は台湾を戦争に向かわせるか?
この質問に対しては、今年3月と8月の調査で大きな変化は見られなかった。
8月の調査では、57%が「同意しない」と回答した(あまり同意しない+まったく同意しない、の合計)。
国防軍の防衛能力を信頼するか?
こちらはやや波のある回答で、今年8月の調査では50%が信用する(大いに信用、信用の合計)と回答した。
過去最も高かったのは2022年8月の59%、最も低かったのは2023年3月の43%であった。
レポートでは、2023年3月に退役軍人に関する日経新聞の報道(台湾では炎上していた)が出たこともあり、防衛力というよりも軍そのものへの信頼に疑問を感じた人が増えたためと分析している。
※炎上した日経新聞の記事関する報道は以下。この後、日経新聞がお知らせとして釈明の文言を新聞に掲載し、ひとまず事態は沈静化した。
感想
この分析を読むと、この調査の回答は台湾の国防力が絶対的にどの程度なのか、ということよりも、中国や世界の情勢といった台湾外の要因に大きく左右されていそうだなという印象を受けた。
おそらく次回は2024年4月と、総統選挙(1月13日)が終わったタイミングでの調査実施になると考えられる。
選挙の間に中国がなにかする可能性もゼロではないことから(やりすぎると自身にも悪影響だから、さすがにミサイル飛ばしたりはしないと思いつつ)、台湾内外の動きを把握しつつ次回の調査結果を待ちたいとおもう。