※今回の記事は「ただのメモ」です※
今回の書籍:
ティモシー・ケイラー著、池上彰監修、高橋璃子訳『スタンフォード大学で一番人気の経済学入門 ミクロ編』
この本を読んだきっかけ
最近ふと、マクロ経済についてもう少しちゃんと勉強しようと思う機会がありました。
そこで本屋に行き、マクロ経済入門の本を買ったところ、本を開いて真っ先に飛び込んだ文字が「まずはミクロから学べ」というものでした。
というわけで、まずはミクロ経済を勉強(復習)することにし、こちらの本を読むことにしました。
ミクロ経済学はn年前に大学で勉強したんですが、大半が忘却の彼方に消えております。
メモ
以下、各章を読んで押さえておきたいと思ったこと or 他の人に説明するときに使いたいと思った考え方メモです。
第1章 経済学とは何か
経済学の基本的クエスチョン(3つ)
・何を生み出すか(What)
・どのように生み出すか(How)
・誰が消費するか(Who)
経済学の基本的考え方
・物事はトレードオフ
全員を一気に幸せにすることはできない。マスコミなどで「幸せになれなかった人」などを1ケースとして取り上げることがあるが、「エピソードを集めてもデータにならない」ので、そもそもエピソードに現れていない人に対しても想像を拡げる必要がある。
・利己的な行動が社会の秩序をつくる(=アダム・スミスの「見えざる手」)
・あらゆるコストは機会費用(=何をやれなかったか考える)
・価格を決めるのは市場
第2章 分業
分業によって市場経済が発達。ただし、ニーズがないものを作っても仕方がないので「価値づけ」のシステムが重要。
※なぜ?という明確な回答は本文には記載されていないが、各自が得意なものを作り、必要としている人に売る(逆も然り。誰かがつくったものを買う)ことで自由な売買が発生するから、と解釈)
分業のメリット
①集中(地の利や得意を活かした仕事に集中)
②習熟(集中すると、その仕事に習熟しやすい。コア・コンピタンス特化)
③規模の経済の恩恵享受
①②を混同しやすい(人に説明するのが個人的に難しいと感じている部分)ものの、①はまずはどの仕事を選ぶかの話、②は①で選んだ仕事のスキルアップみたいな感じ。
①南国の気候に適したサトウキビをつくる
②サトウキビの加工スキルをアップさせる
みたいなイメージ。
第3章 需要と供給
3つの市場:財市場(※)、労働市場、資本市場→これらがマクロ経済をつくる
※本書では、財市場の中でサービスも取引されるとのこと。個人的には財とサービスは別物なので「商品市場」というほうが適切なんじゃないかと思ってしまった。
各市場の需給者をまとめたのが以下。
価値の種類
価値判断→交換価値or使用価値(両者は必ずしも一致はしない)
経済学は基本、交換価値で考察をすることが基本。
価格変動によって需要が変動する理由(2点)
①代替効果
②所得効果
需要量と需要のちがい
需要量:ある特定の価格における需要(=需要曲線上の点)
需要:様々な価格における需要(=需要曲線全体。価格と需要量の関係性について述べる)
※供給量と供給の違いも同じ理解でOK
需要の変化要因(需要曲線がシフトする理由)
- 社会全体の所得水準向上
- 人口増加
- 流行・好みの変化
- 代替品の価格変化
供給の変化要因(供給曲線がシフトする理由)
- 技術進歩
- 自然環境の変化
- 投入物の価格変化(例:原油価格の高騰による、生産量減少)
均衡点
経済学的な意味で「最も効率的な状態」。
ただし、人々がちょうどよいと感じるかどうかは別問題。
第4章 価格統制
価格統制→上限価格規制(例:米国の家賃)、下限価格規制(例:農産品価格)
下限価格規制は、自然な均衡価格が低くなりやすい傾向がある商品に対し、正当(※)な価格を保証するために導入することがある。
※ただし、この「正当」の解釈には価値判断が入っていることに留意が必要。
ちなみに、上述の価格統制を用いて、政府があらゆる人を助けようとした例が、ソ連。
価格統制は、市場に参加している人全員に影響を及ぼすので、困っている人にもそうでない人にも影響が及ぶ(万能策ではない)。
→困っている人だけをピンポイントで助けたいのであれば、価格統制ではなく、別の方法で救うことも可能(例:生活保護、中小規模の農家向け補助金)
第5章 価格弾力性
需要量変化率/価格変化率=需要の価格弾力性
弾力性高(>1):価格上昇に弱い(代替品がある商品など)
弾力性低(<1):価格上昇に強い(代替品がない商品など)
弾力性=1:単位弾力的な状態
詳細は日経の以下の記事も参考になる。
ちなみに弾力性を変化率で求める(金額や数量は使用しない)のは、様々な市場(通貨、単位が違う商品が混在)の状態を簡単に比較できるから。
また、需要も供給も、短期的には非弾力的だが、長期的には弾力的であることが多い(例:ガソリンの消費。すぐに使用料を調整できないが、あまりにも価格高騰が長く続くのであれば抜本的な対策を考えることもある)。
第6章 労働市場
労働需要→短期的には非弾力的(需要が減ってもすぐに解雇はできない)だが、長期的には弾力的。
労働需要の変化(需要曲線のシフト)はいつ起こるか?→生産物に対する需要変化や、生産性の変化時。価格の変化ではない。
労働供給の変化(供給曲線のシフト)はいつ起こるか?→人口増減や人口構成の変化(例:少子高齢化)、社会的風潮(例:児童労働禁止、女性活躍)
労働市場が抱える4つの問題
①最低賃金(一種の価格下限規制)
②労働組合(ただし、いい面も悪い面もあるので、どちらかに決めるというのはナンセンス)
③差別(例:差別による雇用機会の格差、市場の仕組みによる差別の助長、男女間の賃金格差)
④福利厚生(報酬の大事な一要素)
第7章 資本市場
利子=資本市場における「価格」
投資→金融資本/物的資本(機械の購入など)
割引現在価値:将来のある時点で受け取れるお金を、現在受け取ったらいくらになるか考える
企業の資金調達方法
①内部留保活用
②銀行の融資と債券の発行 ※債券→額面価格、利率、期間の三要素
③株式の発行
創業初期は③、会社が大きくなると①②を活用することが多くなる。③は会社の所有権が分割されていくことであるため。
第8章 個人投資
老後に向けた資産形成→資本市場の供給サイド
資産運用を考えるときに検討すべき3つの側面
①リスク(不確実性)
②流動性(資産を現金に換えやすいか)
③税金
資産形成を考えるうえで重要な8つの投資対象
①普通預金(収益率低、利子に課税。ただし流動性は高く、安全)
③定期預金
④社債
⑤株式(優良株)
⑥株式(成長株)
⑦不動産
⑧貴金属
金やプラチナなどは価格変動が大きい。
リスクが高い商品と言われる一方、新型コロナ禍では安全資産として金の価格が上昇している。
株価の予測不可能な動き:ランダムウォーク
第9章 完全競争と独占
どんな企業も4つの競争状態のどこかにあてはまる
完全競争:価格受容性が特徴、新しい企業の参入が容易
独占:地域レベルの独占などもある、法律によって独占が守られるケースもある。同業者の合併や共謀による独占を防ぐのが独禁法。
―自然独占:経済活動の中で自然に参入障壁が生まれた状態(例:規模の経済)
独占的競争:多くの企業が差別化された状態で競争している状態
寡占:寡占企業同士で価格競争があるのか、共謀がないかを見極めることが飛鳥(後者であれば、独占)
第10章 独占禁止法
競争の程度を測る指標
①市場シェア率に注目する方法
- 4社集中度:業界上位4社のシェアを見る。シェアが大きいほど競争は少ない。
- ハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI):指数が小さいほど競争が激しく、大きいほど独占に近い。
「市場」の定義によって数値の評価が分かれることが難点。
②価格分布に注目する方法
ある企業が存在しない場所における、その商品の価格を調べる方法
(ただし、これはECなどで地理的な制限が少なくなっている現在でも通用するのか個人的には疑問に思う)
第11章 規制と規制緩和
市場競争がうまくいかない分野もある(自然独占が起こりやすい)→公益事業として国の規制の対象に
※ここでいう公益事業は、往々にして大規模なネットワークが必要である
公益事業の価格規制
総括原価方式:生産にかかった費用にわずかな利益を上乗せして販売価格を決定する。わずかな利益は競争市場の平均的利益率に基づいて決められることが多く、各社は価格を自由に上げることができない。コスト削減や業務効率化のモチベが下がることが難点。
料金上限方式:当局が一定の価格を定め、数年間はその価格を変えない。コスト削減のモチベが生まれる。
第12章 負の外部性
外部性:ある人や企業の経済活動が、無関係な人に影響をおよぼすこと
負の外部性を規制するための手段
コマンド・アンド・コントロール:上意下達。ただし、規制する側が規制対象者の産業に便宜を図るなどの問題もある(例:二酸化炭素の排出上限量をきめ、それ以上の排出を禁止する)
経済的手法:徴課金(例:二酸化炭素排出量に応じた課税。排出量取引)
第13章 正の外部性
正の外部性の典型例:技術革新。専有可能性がないとモチベは上がらない。
専有可能性:技術革新の成果が、社会の利益になるだけでなく、どれだけ本人の利益になるかということ。そのために重要なのが知的財産権(…これは経済史でも先生が強調してた)。
知的財産権(実務とはまた違う意味合いかも)
第14章 公共財
公共財の特徴:非競合性、非排除性。※政府提供でも公共財にならないものもある
非競合性:使う人が増えても、その財/サービスが減らないこと。
非排除性:対価を払わない人がいても便益を取り上げられないこと。フリーライダー問題が発生する(アダムスミスの「見えざる手」が機能しない分野)。
公共財の例
- 公衆衛生対策
- 道路
- 科学研究
- 教育
第15章 貧困と福祉
「魚を与えるか、釣りを教えるか」
安住しないセーフティーネットが求められる(が、難しいんだこれが)
負の所得税:収入増加によって政府からもらえるお金が減り、勤労意欲がわかなくなる
※正の所得税もある。たくさん稼いでも税金は徴収されるので、意欲低下がゼロというわけではない。
第16章 格差問題
格差≠貧困
貧困←純粋な経済的苦しさに注目
格差←公平性に注目。ただし、年齢や景気によって生じる格差もあるため、格差をゼロにするというのはナンセンス。大切なのは、その格差が妥当な水準かどうかということ。
所得分配は固定的か?
→格差があっても、流動的に階層を移動できるのであれば、問題ではない
第17章 情報の非対称性
情報の非対称性について、市場は様々な対応策(資格、免許、担保、信用調査など)をとっているが、それがうまくいかないときは政府が介入(栄養成分表示、財務諸表公開)。
情報の非対称で最もダメージを受けるのは?…保険市場
モラル・ハザード:危険回避の手段を講じることで、かえって注意散漫になり事故などに巻き込まれやすくなること。
逆選択:情報の非対称性のせいで、いいものが排除され、悪いものが集まってくる
第18章 企業と政府のガバナンス
ガバナンス:組織や企業において、メンバー自身が主体的に全体の動きを監視・評価すること。
本題からそれますが、コンプラとは少し違います。
プリンシパル・エージェント理論:誰かが誰かに仕事を任せるとき、きちんと仕事をさせるにはどうしたらいいか考える理論。
典型事例がエンロン事件。
この事件をふまえて、コーポレートガバナンス強化のため、SOX法が成立。
SOX法:サーベイランス・オクスリ―法。内部統制の確立を図り、適切な情報開示を行わせ、私的・不正な取引・運営を駆逐しようとするもの。
…やっとマクロの復習終了。次からミクロに入りたいと思います。