台湾初、体外で心臓を動かしたまま、心臓移植を希望していた患者に届けることに成功したというニュースを読んだ。
讓心臟維持體外跳動從嘉義帶回台北移植成功 三總創全台首例 | 生活 | 中央社 CNA
全台首例!三總用機器救回「被放棄的」心臟 替6旬男換心成功 | ETtoday健康雲 | ETtoday新聞雲
端的に内容をまとめる。
9月9日に脳出血で倒れた若者がドナーとして適合することが分かった。
ただ、ドナーが救助されてからやや時間が経過しており、ドナーの心臓が移植可能かは不明確で判断が分かれる状態だったよう。
多くの病院が、移植を行わないと判断した中、台北市にある三軍総病院が移植をすると判断した。
レシピエントは、64歳の男性で、心臓移植待ちの順位は全国で11番目だったという。
今回はドナーが最初に搬送されたのが、台湾中南部にある嘉義だったことから、三軍総病院のチームが台北と嘉義を往復した。
さきほど、病院によって判断が分かれたと書いたが、この背景には1時間ほど心臓マッサージを受けていたことや、強心剤をを使用していたことなどがあったそうだ。
そして、こうした状況から、三軍総病院では、チームが嘉義へ行って心臓を取り出し、台北に持ち帰るのがベストと判断したようだ。
この、嘉義から台北まで心臓を動かしたまま持ち替えって移植を成功させた、というのが台湾で初(アジアでは2例目)だったことから、報道されたようだ。
ドナーの心臓を台北に持ち帰る際は、TransMedics社(米国)の器官ケアシステム(OCS(TM))が利用された。
無知なので調べたところ、TransMedicsは心臓だけでなく、肺や肝臓の器官ケアシステムも製造しているとのこと。
今回利用されたシステムは以下で紹介されていた(動画がページ上部にあるので、苦手な人はスルー推奨)。
OCS Heart for HCPs - Transmedics
報道によると、器官ケアシステムは、欧米では10年以上臨床の場で使われており、2000件以上の実績があるとのこと。
話を戻す。
ドナーから取り出された心臓は器官ケアシステムにつながれ、動いたまま台北まで運ばれた。
今回は、全行程救急車で移動が行られ、米国での訓練経験を有する医師3人が担当したという。
ちなみに、嘉義から台北までは約250キロあり、移動時間は、一般人が通常利用する中では最速の新幹線(高鉄)で1時間強かかる。
※直線250キロは、日本で例えると東京と新潟、横浜と名古屋、神戸と広島、仙台と八戸、札幌から網走くらいの距離感。
救急車は時速130キロほどで走り続け、台北到着後、その状態が移植可能であることを確認した上で、同日中に手術が実施された。
なお、報道を読んだ限りだと、同病院では過去に移植する臓器を、アイスボックスを使って試みたことがあったようだ。
ただ、その際は、心臓が動かない状態で移動となるため、いわゆる貧血のような状態になってしまうという(この部分、日本語の知識がないまま中文を解釈しているので、間違っていれば指摘していただけるとありがたいです)。
器官ケアシステムの場合は、心臓が動いたまま運ばれるので、貧血状態に陥ることはなかったそうだ。
ただ、器官ケアシステムにも現時点では課題がある。それはコストがかかることだ。
報道によると、器官ケアシステムを利用する場合、消耗品のコストが1セットにつき約300万台湾元(約1400万円)かかるという。
もちろん、命には代えられないが、金銭的負担がかなり大きいことが課題であり、健康保険の適用などを検討する必要があるとの指摘がある。