まめはな雑記

台湾迷の日本人による、旅行記、読書録、その他メモ。台湾以外のネタも少々含みます。

【読書録】台湾海峡一九四九

「ほしい本リスト」にずっと入っていた台湾海峡一九四九」を先日ついに購入し、読了しました。

今回は、この本を読んで感じたことや印象に残ったことをまとめたいと思います。

 

▼今回読んだ本

龍應台『台湾海峡一九四九』、2012年、白水社

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本書の舞台は

この本のタイトルにもある「一九四九」というのは、国共内戦が終わり、中華人民共和国が成立した年を指します。

中国では、1927年から中国共産党中国国民党が対立をしていました。

1937年には日中戦争のため、一時停戦となったものの、1946年から(すなわち日本が敗戦した後)対立が再度激化しました。

停戦をはさむため、国共内戦は第1次(1927~1937年)と第2次(1946~1949年)にわかれますが、一般に「国共内戦」というと、第2次の方を指すそうです。

この内戦により、蒋介石率いる国民党軍は台湾へ撤退しました(=歴史の教科書では、中華民国政府の台湾移転、といわれます)。

 

本書の舞台は、この国共内戦下の台湾や中国です。

内戦で中国から台湾に逃げた人々や、彼らを受け入れた台湾の人々、台湾から戦場に向かった人々など、様々な立場の人が、内戦下で何を経験し、どのような決断をし、生き延びたのかを綴っています。

世界史の教科書などでは、国共内戦という事実や、その結果しか知ることができませんが、「台湾海峡一九四九」を読むと、内戦下で人々がどれだけ惨い経験をして悲しい思いをしたのか、肉体的にも精神的にもどれだけ苦痛だったのかを知ることができます。

 

この本に登場する方々

先ほど少し触れましたが、この本は対話や小説的な表現等を含みつつ、内戦下で何があったのかを描いています。

登場するのは内戦下を生きた「一般の人々」です。

 

歴史の教科書では個人のエピソードに焦点が当たることは(よっぽど有名な人でない限り)ほぼありません。

しかし、本書では一般の人々に焦点を当て、彼らが内戦によって受けた痛みを綴っています。

一般人に焦点を当てているからこそ、その人の出身や所属部隊にかかわらず、皆それぞれの立場で、それぞれの痛みを経験していていることがわかります。

また、彼らは軍服を脱げば自分と同じ「一般人」であり、時代が違えば自分の様に不自由なく暮らせたはずであるにもかかわらず、本書に記載されるようなむごい経験をしたのか、と思うと非常に胸が痛みました。

同時に、人々にそのような状況を敷いた「戦争」にやるせなさを感じました。

さらには、そもそも存在すら知られていない戦争もあり、「偉大な勝利」の裏ではらわれた凄惨な犠牲があったことにも、胸を衝かれました(具体的に言うと、長春包囲戦というそうです。ウィキ情報ですが)。

 

まとめ

戦争のやるせなさを、戦禍を被った一般の人々の声を通じて痛感させる本だと思います。

むしろ、自分と同じような立場の人の声だからこそ、より惨さを感じられるのかもしれません。

 

さらに、本書にもそのような描写がありますが、かつて彼らや彼らの戦友が倒れ、血で染まった土地の上に今我々が立って、無邪気に生活できていると思い知らされました。

そのような歴史を知らずに、或いは忘れてしまうことこそ、真に救いようのなく、やるせないことだとだと思います。

「一九四九」という時代に、どのような人が、どのように生きたのか、ぜひ本書を手に取って知っていただけたらと思いました。

 

bookmeter.com

 

今回の記事は以上です。

最後までお読みいただきありがとうございました。