まめはな雑記

台湾迷の日本人による、旅行記、読書録、その他メモ。台湾以外のネタも少々含みます。

【読書録】国家はなぜ衰退するのか

今回の書籍:ダロン・アセモグル、ジェイムス・A・ロビンソン著、鬼澤忍訳『国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源』2016年、早川書房

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この本を読んだきっかけ

産業発展論を学んだときに、なぜ国・地域・企業間で格差が生まれるのかはいまだに解明されていないものの、最新の考察としてこういうのがある、ということで紹介された書籍(といいつつ、受講中には読み終わらなかった)。

各国の比較優位や生産性だけでなく、それを導くための「制度」に着目している点が特徴的な印象です。
 

本の内容メモ

格差や貧困が生じる要因を考察する一冊。

「考えようにもどこから手を付ければいいかわからない壮大な問題」を論理的に説明しようとする、自分が大好きなタイプの本です。
 

以前紹介した『銃・病原菌・鉄』が、大陸や地域ごとの格差が生まれる理由を考察したのに対し、この本は、気候的には同じ環境にありながらも豊かな国とそうでない国が生まれるのは政治と経済制度の違いであると述べています。

dou4hua1.hatenablog.com

『銃・病原菌・鉄』では、家畜化や栽培化が可能な動植物の分布が経済発展のキーとなると考察されていて、例えばメソポタミア文明や「太陽の沈まない国」スペインの誕生を説明することができます。

他方、かつて繁栄していたローマ帝国オスマン帝国がなぜ没落したかは説明ができません。
 

『国家はなぜ衰退するのか』では、一旦国家が発展しても、それによって権力を得た人が、自らの権力が揺らがぬよう、収奪的経済制度を導入し、イノベーションを拒んだ場合は経済の発展が困難になると述べられています。

ここでいうイノベーションは技術革新という意味に加えて、既存のもののやり方や地位が揺らぐ、といった意味合いも込められているように思いました。

本書の言葉を借りて言い換えれば、経済発展のためには、包括的経済制度(と、秩序を課し、規則や権利を制定できる中央集権制度)が必要ということになります。

そして、その具体例として、なぜイングランドで世界で最も早く産業革命が起こることになったのか、欧州の列強に植民地化されたアフリカや中南米の国々はなぜ経済発展が遅れたのか、が説明されています。
 

さらに、本書を読んで気づかされるのは、繁栄は永遠ではなく、経済制度が変わればどこの国でも、すぐに繁栄は反転するということです。

具体例として、ローマ帝国の衰退などが説明されています。

言い換えれば、いまは世界でGDP3位の日本も、収奪的制度を導入するようになったら簡単にその地位を落としかねないのだと思いました(イノベーションを拒む、というのは、今でもなきにしもあらずな感じがするので敢えてふれませんが...苦笑)。