まめはな雑記

台湾迷の日本人による、旅行記、読書録、その他メモ。台湾以外のネタも少々含みます。

【読書録】日本語と華語の対訳で読む台湾原住民の神話と伝説

先日、アマゾンで

『日本語と華語の対訳で読む台湾原住民の神話と伝説』

という本をみつけました。

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ちょうどこの本に出合う前、セデック・バレ(注1)を見て台湾原住民の神話に興味を持っていたので、購入し、読んでみました。

この記事では、上下巻を読んだ感想をまとめたいと思います。

 

(注1)魏徳聖監督の、霧社事件を題材にした映画。映画の中でセデック族の「掟(ガヤ)」について言及があります。セデックバレについては別の記事でもちょろっと紹介しています。

 

収録している神話・伝説

上巻では、アミ族プユマ族、タオ族、パイワン族ルカイ族の神話・伝説を、下巻ではブヌン族、サオ族、ツォウ族、サイシャット族、タイヤル族の神話・伝説を収録しています。

内容は民族によってさまざまで、民族の名前や祭祀、禁忌の由来、なぜその場所に居住するようになったのかなどが神話・伝説を通じて理解できるようになっています。

例えば、プユマ族の「プユマ」というのは「集合団結」を意味していたようなのですが、次第に集落の名前となり、最後は民族全体の名前を表す言葉になったという伝説がありました。

他にも、サオ族が日月潭周辺に子住するきっかけとなった「白鹿物語」、サイシャット族の祭祀である「パスタアイ」が行われるようになった背景などを知ることができました。

 

余談ですが、この本を読む前に、各民族が台湾のどの地域に住んでいるのか(海沿いか、山沿いかなど)を知っておくと、より伝説・神話を楽しめるように思います。

例えば、サオ族は日月潭周辺に住んでいるため、湖にまつわる話が収録をされています。また、タオ族(蘭嶼に居住)は海にまつわる話が登場します。

 

個人的感想

上下巻を読んで感じたこと・気づいたことは大きく2点ありました。

1点目は、独特な神話でありつつも、話の流れは古事記など他の神話とも共通する部分がみられたということです。

例えば、2種類の人が出会って子供を産み、島を繁栄させた話(タオ族、「竹生人と石生人」より)は、古事記に書かれているイザナギイザナミの国造りとなんとなく似ています。

ちなみに、この感想を友人に共有したところ、神話類型という分類があり、物語を類型に分けるという研究もあると教えてくれました。

(参考)物語の類型 - Wikipedia

 

2点目は、祭祀の中には、何かに対する感謝を示すことが由来のものだけでなく、祟りを起さないために行うものもあるということです。

例えば、サイシャット族の祭祀である「パスタアイ」は、タアイという小人による天罰が下らないようにするために行ったことが由来だそうです。

なんとなく歌を歌ったり、踊りを踊ったりするお祭りは明るい出来事が由来なのかなというイメージを抱いていたため、必ずしもそうとは限らないということに驚きました。

また、これは読み手の勝手な印象かもしれませんが、「そんな理不尽な…」という理由で祭祀を行うようになったというストーリーもあり、その理不尽さも含めてなんだか「神話」らしいなあと思いました。

 

台湾原住民の神話・伝説を日本語で伝えてくれる書籍はそうそうありませんので、この本はとてもよい勉強になるかと思います。

台湾原住民や、神話・伝説に興味のある方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

 

最後までご覧くださりありがとうございました。